著者の桜井博之先生へのインタビュー【英文和訳の着眼点】【英文読解の着眼点】
2024年09月13日
『英文和訳の着眼点』の刊行を記念して、著者の桜井博之先生に特別インタビューを行いました。
今回の書籍に込められた思いについて、5つの質問にお答えいただいています。
Q1:『英文和訳の着眼点』を書こうと思ったきっかけは?
受験生からよく受ける質問にこのようなものがあります。「目的語が後ろに回されているとか、先行詞と関係代名詞が離れているとか、未知の単語の意味を前後の言い換えや対比の関係から類推するとか、先生に説明されたらわかるのですが、自分では気づけないのです。どうしたらよいでしょうか」
みなさんは次のようなアドバイスをされたことがありませんか。「英文を『しっかり』読みなさい」「文脈を『じっくり』考えなさい」「単語を『たくさん』暗記し、英文を『たくさん』読みなさい」と。要するにみなさんは「がんばれ!」と気合を注入されているわけですが、これでは「何をどうがんばればよいのか」がわからずに困っている受験生の助けにはならないのではないか。これがこの問題集を書こうと思ったきっかけです。
Q2:では、何をどうがんばればよいのですか。
アドバイスは具体的でなければなりません。かといって、厳密さを重んじるあまり、難しすぎても、詳しすぎても、現場の受験生の役には立ちません。そこで、できるだけシンプルなキャッチフレーズとして「タテとヨコの意識づけ」というのを考えました。「タテとヨコに注意しろ!」と常に自分に言い聞かせることで、ともすれば大事なことを忘れてしまう自分に注意を促してほしいのです。
「タテ」とは文章の構成要素である文と文とのタテのつながり[文脈]、「ヨコ」とは1文を構成する単語と単語のヨコのつながり[構文]のことです。「タテとヨコのつながり」への注目は、英語が読める人なら誰でも、当たり前のこととして、意識的・無意識的に、やっていることですが、受験生の中にはそれがやれていない人がいます。それどころか、「タテのつながり?」「ヨコのつながり?」「なんだ、それ?」という人さえいるようです。そういう人たちにはぜひ、「タテとヨコの意識づけ」を習慣にしてほしいと思います。
目の前の単語をただ受動的に受け止めるのではなく、それは同じ文の中の他の単語とどうつながっているのか[構文上のつながり]、また、その文は、他の文とどうつながっているのか[文脈上のつながり]と、能動的に探す姿勢が大切です。
Q3:「探す目があれば、見えてくる」とおっしゃいますが、「探す目」はどのように身につければよいのでしょうか。
「問題意識をもつことによって」です。文法や構文の基礎をひと通り、事前に頭に入れておく必要があることは言うまでもありませんが、あとは、ある単語を見たら、それと関係する単語を意識して探す(Sを見たらOを探す、形容詞を見たら、どの名詞を説明するものかと考える、など)。ある文を見たら、それと関係する文を探す(内容面で言い換えている文、対比している文、因果関係を述べている文を意識して探す、など)。「他動詞の次に名詞があるはずなのに、直後にない。どこに行ったのだろう?」「〇〇は文脈上、どこを引き継いでいるのだろう?」「どこと対比されているのだろう?」このように、単語と単語の「関係性」、文と文の「関係性」を探すのです。意識して探せば「つながり」が目に入ってきます。問題意識のない目には見えなくても、問題意識をもっている目には、求めているものが飛び込んできます。発見は、事前の準備ができている人に訪れるのです。
Q4:上手に和訳するコツはなんですか。
「ぎこちない直訳しかできないので、わかりやすい『意訳』の仕方を教えてください」と受験生からよく言われます。気の利いた「意訳」というのは、表現と「にらめっこして」いて、突然思いつくものではなく、表現を「いじくりまわして」組み立てるものでもなく、一定の思考プロセスを経て生まれるものです。意訳のコツの1つは、その表現が表している「ことがら」そのものを思い浮かべることです。一見難しいこと、複雑なことを言われたら、「それって、どういうこと?」と聞き返しますよね? それです。「それって、どういうこと?」と自問するのです。そのときに、変形された文を「元の形に戻してみる」のが有効な手段の1つです。名詞構文を元の文に戻す、関係代名詞節を元の文に戻す、分詞構文を元の文に戻す、比較構文を元の文に戻す、などして、問題になっている「ことがら」そのものを理解することから、わかりやすい和訳を作る道が開けてくるのです。具体的なことは本書で学んでください。
Q5:『英文読解の着眼点』と『英文和訳の着眼点』のちがいは? どちらからやるのがよいですか。
『英文読解の着眼点』は、主として「言い換え」と「対比」に注意しながら、英語長文の読み方と読解総合問題の解き方を全般的に扱ったものですが、『英文和訳の着眼点』では和訳問題にしぼり、主にワン・パラグラフの英文について、1文ごとの単語と単語のつながり[構文]、文と文とのつながり[文脈]をできる限り詳しく解説しています。1つ1つの文が読めることが長文読解の基本ですから、その意味では、構文解説の詳しい『英文和訳の着眼点』から始める方がよいでしょう。
桜井先生、貴重なお話をありがとうございました。
『英文和訳の着眼点』は9月20日刊行予定、『英文読解の着眼点〈改訂版〉』は絶賛発売中です。